ベリーダンスとベリーダンスに纏わる人たちを広く世の中に伝えてくれたドラマ『セクシー田中さん』
(日本テレビ2023年10月22日~12月24日放送)
どのダンスシーンにも、出演者の方を通じて原作者芦原先生のベリーダンスへの想いが溢れていて、私たちにとっても特別な作品になりました。
このドラマの監修を終えてドラマや芦原先生について対談形式でまとめてみました。
―まず初めに『セクシー田中さん』の監修のお話しがあった時にどのように思われたのでしょうか?
過去にも何度かTV出演や映画でのベリーダンスシーンを監修したことがあり、特に不安なく自信持ってお引き受けいたしました。
自分自身も好きな人気コミックのドラマ化ということで、ベリーダンスの素晴らしさを多くの人に知ってもらえるよいチャンスだ思いました。
また、ベリーダンス界全体がドラマをきっかけに盛り上がるよう、多くのレストランやショップ、ダンサーさん達に制作に関わる機会をお声がけしました。
撮影まで数ヶ月しかなく主演女優さんを「プロレベルまで育てなくてはならない」、というのは正直かなり厳しいと思いました。
限られた時間でそのレベルまで持っていく為に、かなり綿密にカルキュラムを作りました。
加えて女優さん達の真摯な努力の賜物で、「ダンスが素敵」という視聴者の声が続々でした。
―監修ということですが、どのようなかかわり方をされたのでしょうか?
ベリーダンスのレッスンがメインになりますが、衣装やレッスンウェアの着こなし、髪型やメイクのアドバイスも行いました。
加えてアラブ関係に関する台詞や描写、用語の発音やイントネーションのアドバイスまで多岐に渡るものでした。
ベリーダンスの場面は全て立ち会い、チェックの他にも、本番前にスタントで踊ったり、撮影中は走り回ってましたね。でもスタッフさんたちの雰囲気が良くてとても楽しかったです。
カットがかかってからチェックしてます。ダンスシーンが終わるたびに大きな拍手が。
―とてもリアルなスタジオシーンだったと評判でしたが、イズミスタジオがモデルだとか。
スタジオはイズミオリエンタルスタジオと全く同じサイズなんです。
忘れ物の水筒が置いてあったり、「電気の消し忘れに注意」などの貼り紙が貼られてあったり、貸し出し用スカートが下がっていたり、細かいところまでリアルに再現されていて感心しました。
装飾品も全てうちが貸し出しました。
毎回自分のスタジオにいるかのような錯覚に陥っておりました(笑)
-レストランのサバランは隣のビルでロケでしたね。
レストランの2階がベリーダンス教室という設定だったので、隣のビルの1、2階が使われていました。こちらも本物そっくりでしたので、体験に来た方が間違えてロケ地に入りそうになったと(笑)
サバランの内装は首都圏のレストランをいくつか見学して再現しました。
楽屋や裏の雑然とした雰囲気、ステージの照明までそっくりでしたね。
美術さんや大道具さんたちの素晴らしい技術の成果です。
忘れ物のガウン(Izumi私物)がかかってるなど細かいところまで再現
スタジオの左隣のビルがロケ地。体験の方が間違えて隣に入りそうになったくらい本物そっくり
-衣装の豪華さも話題になっていましたね。
衣装はエジプト製またはウクライナ製で、私の衣装を全て貸しました。
友達でもあるAida Olgaの物が多く、プロが着用する本物の衣装のおかげでベリーダンスシーンもよりリアルなものになりました。
また、ベリーダンスは、踊りの様式と衣装やアクセサリーなどが関係していて、例えばこの踊りは靴を履くか履かないか、アクセサリーはどのようなものか、髪型は・・など細かい決まり事があります。それが全て正しく再現できたのもありがたかったです。
メイクさんたちがとても協力してくれました。
ターバンの巻き方を指導したのも良い思い出です。
衣装もデザインして本場カイロの工房に作ってもらいました。
スタジオ生徒たちからレッスンウエアなども貸してもらいました。みんなありがとう!
―俳優さんたちのベリーダンスも好評でしたね。
主演の木南晴夏さんはじめ、全てのキャストの皆さんが真摯にレッスンに取り組んでくれたおかげで完成度の高い作品ができました。
スタジオレッスン同様のベリーダンスのレッスンを週2回開催していましたが、みんな仲が良くて和気藹々としていました。
「愛子先生は手をもっと、こう」、「田中さんは腰をもっと上下に」など、レッスン中は全員を役名でお呼びしてました(笑)
心がけていたのは、スタジオレッスンと同様に、「まずは楽しむこと」。楽しんでもらえたら嬉しいなと。そして正しいベリーダンスを伝授したかったので、基礎からしっかりお教えしました。
「クランクアップで絶対に先生泣くよねー」と俳優たちから言われていたんですが(笑)、もう最後の結婚式のシーンでみんなが踊っているのを見ていたら、この数ヶ月の一緒に過ごした日々が走馬灯のように思い出され、本当に上達したなと。涙で場面が見えず、困りました。
スタッフさん達から花束いただきまた涙
※ちなみにセクシー田中さんのキャストの方にレッスンした、初心者クラスで行っているレッスンはこんな感じです。
レッスン風景などのYouTubeへリンク設定
スタジオの生徒もエキストラでダンサー役やサバランのお客様役として協力してくれました。
愛子先生役のMieさんのインスタで紹介いただきました!人一倍努力されてて本当に尊敬です。
日テレからだウィークのイベントにも出演。やすこさんにベリーダンス踊っていただけました。素敵でしたよ!
―セクシー田中さんの監修を終えた今、どんなお気持ちでしょうか?
過去にも何度かベリーダンスはメディアに取り上げられたことはありますが、「色っぽい」「妖艶」「露出」「セクシー」といった面ばかりが強調されがちでした。
「一般になかなか理解されにくいベリーダンスを正しく世に伝えたい。
ベリーダンスの素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい」
ドラマ「セクシー田中さん」ではリアルなベリーダンスシーンが描かれていて、まさに今の私たちのベリーダンスの世界を正しく伝えてくれました。
原作者の芦原先生もドラマの成功とベリーダンスが広まったことをとても喜んでくれました。
私たちベリーダンス愛好者の思いを演じてくれた役者の皆様、並びに制作スタッフ、中でも要望を全て汲み取っていただいたプロデューサーの方には心から感謝いたします。
―大好評でドラマが終わってから1ヶ月も経ってからの、芦原先生の訃報はショックでしたよね。
突然の訃報が信じられず、しばらくは深い衝撃と悲しみから立ち直れずにいました。
「セクシー田中さん」は、私たちにとって特別な作品でした。
ベリーダンスとベリーダンスに纏わる人たちを広く世間に伝えてくれました。
どのダンスシーンにも、田中さん、朱里ちゃんたちを通したベリーダンスへの想いを語る言葉にも先生のベリーダンス愛が溢れていて、誰もが共感いたしました。
ベリーダンスを取り上げた作品がドラマ化されたこと、そして関わらせていただけたことにどれだけ私たちが嬉しく誇らしく、感謝したことでしょう。
悲しみは尽きませんが、これからもベリーダンスを楽しく踊っていくことが先生が望むところかと思います。
芦原先生、本当にありがとうございました。
田中さんはいつまでも、私たちと共に踊っていきます。